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気候危機打開
南オーストラリアで見えた未来像

龍谷大学政策学部教授 大島堅一さんに聴きました

気候危機を肌で感じる事が増えました。打開の展望はあるのでしょうか?エネルギー問題に詳しい大島堅一さん(龍谷大学政策学部教授)に、オーストラリアを視察して実感したCO2削減の道筋について聞きました。

再エネ100%は達成できる
太陽光発電と風力発電をVRE(自然変動性電源)と呼びます。これらをどう増やすかが今の大きな焦点です。
かつては原発を主力電源とみなしていたIEA(国際エネルギー機関)でさえ、2024年版のロードマップでは、将来のほとんど再エネになる。VREだけで電力100%にしうると見通しています。
IEAはVREの各国の達成度を6段階で評価し、6段階目は太陽光と風力発電だけで電力100%です。南オーストラリア州とデンマークは5段階目に達しています。

台風をきっかけに
南オーストラリアの再エネの発展を実際に見てきて、これほどとは、と驚きました。
オーストラリアは化石燃料の資源が豊富で、かつて火力発電がほぼ100%でした。今は電力の再エネ100%は通過点であり、全エネルギーを再エネ100%にする未来像を描きます。「グリ−ンアイアン(再エネで作った鉄)を輸出したい」と言っていました。

日本は今、3段階目。風力や太陽光が一定普及しており、既存の電力システムにも影響を与えつつある段階です。
3段階目に達した指標としては、電力需給量のグラフでダックカーブ(アヒルの形)が表れているかどうかです。家庭に太陽光パネルが普及すると、太陽光以外の電力で供給しなければならない電力の購入量が下がり、朝と夕方に増えるU字になります。南オーストラリアはVREだけで電力の74%に達しており、27年には100%を目指しています。

南オーストラリアが大きく変化したきっかけは、16年の台風で大規模停電に直面したことです。翌年に129メガワットのメガバッテリー(巨大蓄電施設)を設置。コンピュ−タが管理し、各家庭で作る電気を調節し、価格は秒単位で変動します。
VPP(バーチャルパワープラント=仮想発電所)といって、何万軒もの家庭や事業者が登録して、バーチャルな発電所として電気を供給する仕組みも普及しています。 日中は電気代がマイナスになり、夜使用した電気代と相殺して安くなります。多くの家庭が、太陽光発電と蓄電池の両方を持っており、災害の時は自家発電にできます。

▲家庭用蓄電池などを備えることで、電力の需要と供給のバランスが調整しやすくなります
 南オーストラリアで
▲南オーストラリアに設置された巨大蓄電施設


環境破壊防ぐ策
日本の場合は、太陽光と風力を「不安定電源」と呼んでいる人が多く、再エネへのネガティブな情報が流布されています。たしかに、環境破壊につながるケースもあり、対策が必要です。その主要な原因は政府が環境破壊を防ぐための規制を適切に行っていないことです。ヨーロッパでは、土地の利用が規制されるなど、環境破壊を防ぐしくみがあります。

廃棄物の問題も日本は自動車廃棄物が圧倒的に多いですが、メディアで自動車の利用を批判する声はない一方、太陽光パネルは取り沙汰されます。太陽光パネルの再利用の仕組みを整えるべきですし、環境破壊を行う悪徳業者を取り締まるなど、政策誘導が重要なのです。

日本は欧米から比べると20年以上遅れています。40年に再エネを4〜5割、50年に5~6割にするというのが目標ですが、EU各国が現在おおむね到達している比率です。第7次エネルギー基本計画でも、火力発電を残し、原発は増設しようとしており、世界とは逆方向に向かっていると言わざるを得ません。莫大な補助金をつけて原発をそうとしている。再エネの普及を妨げているのは原発の存在です。

世界の太陽光発電設備の伸びは、24年1年間で 約452メガワットです。アメリカで1年間に増えた発電設備のうち、98%が再エネ関連でした。太陽光が38ギガワット、100万キロワットの原発30基分増えています。中国に至っては、1 年間で太陽光が278ギガワット増えています。
世界規模で、産業革命に匹敵する変化が起きようとしています。 石炭と製鉄の第1次産業革命、石油の第2次産業革命を上回るスピードで、世界は再エネ100%に向かっているのです。
(しんぶん赤旗 2025年5月13日掲載)
(写真は大島さん提供)


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