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消費税減税と社会保障

佛教大学社会福祉学部 准教授 長友薫輝さんに聞く

目前に迫った東京都議選と参院選の大争点に消費税減税が浮上するなか、「消費税減税で社会保障が削られるのでは」と心配する声もあります。社会保障問題に詳しい長友薫輝さんに聞きました。

「社会保障に回すお金がない」とよく聞きますが
国は「社会保障に多くの予算を投じている」などと言うので、そう思っている人が多いと思いますが、実はそうではありません。
2024年度予算の社会保障給付費137.8兆円のうち、80.3兆円(59.5%)を保険料で、54.7兆円(40.5%)を公費(国と地方)で賄っています。
公費のうちの国の負担は37.7兆円(27.9%)です。国の負担は多くなく、むしろ被保険者が払う保険料の方が多いのが実態です。

法人税の穴埋め
一方、税収はどうでしょう
国の主要な税収である所得税、法人税、消費税のうち、消費税率は1989年の導入当初の3%から現在の10%に引き上げられましたが、法人税の実効税率(概算)は90年度の52.0%から2023年度には29.7%にまで引き下げられました。
その結果、10年度以降は法人税収が消費税と所得税を下回ったままです。現に23年度の税収は消費税23.1兆円、所得税22.1兆円、法人税15.9兆円です。法人税は利益に応じて負担を増やすべきです。

消費税増税と社会保障財源との関係は
これまで政権与党は社会保障の充実を名目に消費税を増税しましたが、実際は法人税減税などによる税収の穴埋めに使われました。12年には消費税法改定にあわせて、社会保障制度改革推進法ができましたが、ねらいは消費税増税と社会保障の削減でした。

14年、安倍政権は消費税を5%から8%に引き上げる際にも、”増える社会保障費を賄うのは消費税しかない”との大キャンペーンを行いました。そのため、消費税=社会保障の財源だと思い込んでいる人も多いのですが、14年度の消費税引き上げの増収分で、社会保障の充実に使用されたのはわずか1割に過ぎません。そのあとも社会保障は充実どころか削減の連続で、保健・医療・介護・社会福祉分野の担い手の確保が困難な状況は深刻化しており、労働条件の根本的な改善すらできていません。このことからも、消費税は社会保障の充実には使われていないとわかるのではないでしょうか。


応分の負担求め
社会保障の機能とは
12年版の「厚生労働白書」は、@生活安定・向上機能、A所得再分配機能、B経済安定機能―があるとまとめ、「景気変動を緩和し、経済成長を支えていく」機能があると指摘しています。この機能をより発揮できるように財源を重点的に配分することが必要です。

そもそも、社会保障は人権保障でもあります。生存権、健康権を保障するには、どれだけの社会保障費が必要かを算出するところから出発しなければなりません。

1960年、低すぎる生活保護基準は憲法に反すると訴えた朝日訴訟での東京地裁判決は「社会保障は予算の有無ではなく、予算を指導・支配すべきもの」だという趣旨でした。この判決は、現在でも示唆に富む内容です


社会保障を充実させる財源は
消費税と社会保障をリンクさせるのではなく、消費税を減税し、大企業・富裕層に応分の負担を求め、社会保障を充実させる財源を確保する必要があります。財政よりも人権が優先される社会を目指すべきです。

(しんぶん赤旗 2025年6月10日掲載)


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