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EUの労働者の闘いから見えてくる日本の労働事情

≪第1回 はじめに≫
1886年5月1日アメリカの労働者が8時間労働制を要求して決起した闘いに対し経営者と権力が弾圧し多くの労働者が死亡しました。これが、全世界の労働者階級の国際統一行動へとつながり、メーデーの始まりとなり、「万国の労働者は団結せよ!」のスローガンが掲げられました。グローバリゼーションの時代、国境なき大競争のもとで勝つか負けるかが議論されている時に、これはもう時代遅れの、無用なスローガンなのでしょうか。

そうではありません。世界経済秩序としてのグローバリゼーションが進む中で、国境を越えた資本の本質が、各国の独自性や国民の利益などと激しく対立し、破壊しています。だからこそ、世界中の働く者は「万国の労働者団結せよ」のスローガンを掲げ、団結して闘うことが重要となっています。

「しんぶん赤旗」に「見た感じたEU労働事情」の記事が2005年3月27日から4月6日まで7回にわたって連載されました。日本の労働問題研究者と組合関係者がフランス、ドイツそしてイタリアの労働組合の幹部と会い、議論した内容を簡単にまとめた訪問記です。この記事に関連情報も加えて、3カ国の最近の労働事情について、シリーズでフランスとドイツ各2回、イタリア1回、計5回掲載します。

この中で、日本の資本がいかにEUの労働者の権利を時代逆流させようとしているか、EUの労働者はその攻撃に対し、人間らしい労働と生活と権利を守るためにどのように闘っているかが見えてきます。日本の労働条件・労働運動との対比を通して明らかになってくることは、いま日本の働く者は、EU並の労働条件を求め、EUの労働者と強く連帯しながら闘う必要があるということです。
これから載せる5回の記事の概要は:

フランスへ日本から「輸出」されたもの
フランスではトヨタの現地工場を訪ね、フランスの労働者がどんな労働条件で働いているか調べました(シリーズ第2回)。雑誌「前衛」2005年2月号には、同じようにフランスの工場における労働条件を調べ、日本のトヨタの工場における労働条件と比較した論文が載りました(シリーズ第3回)。この2つの報告から明らかになってくることは日本の過密・長時間労働がフランスに「輸出」され、その結果フランスの労働者が苦しめられていること、そして労働者が組合に結集し、それにめげずに闘っているということです。

ドイツの労働条件が悪化
ドイツでは労働者の生活と諸権利を守るための社会的な制度が整備されています。日本の労働者にとっては夢のような話に見えます。ところが近年、それが会社から攻撃を受け、労働者・組合との攻防が続いています(シリーズ第4回)。これは「しんぶん赤旗」に2004年末に掲載されたドイツ労働者の1年間の闘いをまとめた記事にもよく描かれています。ドイツを代表する電気・電子製品や自動車の企業が世界的な競争力を維持するため、安価な労働力を求め東欧などへ工場を移転(ドイツ国内産業の空洞化)しようとしたり、労働者の解雇や労働条件の切り下げを推進しようとしたりしています(シリーズ第5回)。その背景には、日本の過密・長時間労働・下請けいじめなど過酷な労働・低賃金などの問題があります。ドイツの資本は日本の安価で高品質の電気・電子製品や自動車の輸出に押され、競争力を失いつつあるため、日本の労働条件の「悪例」に見習おうとしています。

悪化の震源は日本の劣悪な労働条件
日本の労働条件の劣悪さはフランスでもドイツでも労働条件を切り下げる原因の一つになっています。その歯止めは日本の労働者の労働条件をEU並に、人間らしい生活ができるような条件に改善することにあります。フランスやドイツの労働者と連帯し、団結して資本と闘う必要があります。まさに万国の労働者が団結することにより働く者の労働条件は改善されます。

イタリアの労働者組織化への挑戦
イタリアではいろいろな分野と立場にある働く者を組織化する挑戦が行なわれ、組織拡大に成功しています(シリーズ第6回)。日本では組合員の組織化率がどんどん低下し、現在2割を割り、フリーターやパートなど未組織の労働者が増えています。その原因は組合が労働者の要求をくみ上げて、資本と闘う姿勢が弱く、組合員の期待に十分答えていないことにあります。イタリアの経験は、組合の改革と強化がいま日本の組合に必要であることを雄弁に語っています。

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