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高炉
加古川製鉄所でまたも悲惨な死亡事故発生!

加古川製鉄所で7月5日(水)、またも死亡事故が発生しました。
7月6日(木)の神戸新聞によると、事故は次のようなものでした。

"5日午後2時ごろ、加古川市金沢町、神戸製鋼所加古川製鉄所内の鉄鉱石を加工するペレット工場付近で、地上10メートルの高さにクレーンで持ち上げられていた鉄板(縦約2メートル、横約1.2メートル、重さ約140キロ)が突然落下。地上で作業していた山本晃生さん(21歳)=たつの市新宮町=を直撃した。山本さんは頭の骨を折るなどし、約一時間半後に死亡が確認された。"

 前途のある若者の悲惨な死亡で、本当に悲しくなります。心からのお悔やみを申し上げます。それと同時に、昨年の5月の死亡事故に続いて起こった今回の事故に対する会社の責任を厳しく問わざるを得ません。
 2006年6月22日付け「労働ニュース」1424によると、5月25日(木)第61回鉄鋼部門生産委員会が開催され、その場で鉄鋼部門長である木村副社長が労組に2006年〜2008年度鉄鋼部門中期経営計画を説明するなかで、特に安全問題に対して次のように述べました。

 "前中期(2003年度〜2005年度)では、当初計画を大きく上回る収益を達成する一方で、安全・防災面で大きな課題を残した。従って、鉄鋼部門では「安全・防災の徹底」を今中期の最優先課題と位置付け、将来を見据えた基盤強化・製造業の原点に立ち戻った「ものづくり力」の強化に注力していく。「ものづくり力」の強化においては、製造現場の充実は不可欠であり、その大前提となる安全・防災を徹底するには、各人が基本的な部分から問題意識を持ち、自ら考え、全員でルールを決めて守っていくことが欠かせない。つまり、安全・防災の徹底なくしては、満足のいく「ものづくり力」の充実などあり得ず、本中期の実行にあたっては、このことを肝に銘じて臨んでいく所存である。"

 この言明から一ヶ月後に、今回の事故は起こりました。木村副社長は従来からの安全・防災対策の一層の徹底を呼びかけたわけですが、今回の事故はこのような安全対策では限界があることを露呈しました。
今回の死亡事故はたまたま不幸にして発生したというような性格のものではありません。 次のグラフ表を見てください。

鉄鋼4社安全成績推移グラフ

鉄鋼4社安全成績推移(休業以上)
'00年'01年'02年'03年'04年'05年
件数7068606879106
死亡事故(内数)4714131010
(注)・ 鉄鋼4社(新日鉄、JFE,住友金属、神鋼)の鉄鋼製造事業所の集計。
従って、神鋼は鉄鋼関連の加古川・神戸・高砂の3事業所の集計であり、全社の集計ではない。

2004年(1月〜12月)・2005(1月〜12月)年の鉄鋼会社別の安全成績
会社名2004年2005年
件数休業度数率件数休業度数率
神鋼
70.26@180.63
新日鉄D370.35B420.38
JFEC270.31D350.39
住友金属@80.22@110.30
合計I790.31I1060.40
(注)・○内数字は死亡数で内数。
  ・休業度数率=休業災害被災者数×100万÷延べ労働時間

休業災害発生件数の比較

@1996年〜2004年迄の年平均A2005年A/@
鉄鋼4社72106約 1.5倍
神鋼全体918約 2.0倍
加古川511約 2.2倍

 この数年間、鉄鋼大手4社でも、神鋼の神戸・加古川でも事故は右肩上がりに増えており、2005年では一層増加しました。
この間、生産量は飛躍的に増えました。下表の神鋼粗鋼生産量推移のとおりです。これは神鋼だけなく、鉄鋼大手共通の現象です。

神鋼の粗鋼生産量の推移
年度粗鋼生産量
(単位:千t)
指数
20006,644100
20016,56399
20026,918104
20037,397111
20047,806117
20057,653115

 一方、凄まじい勢いで人減らしが強行されました。一例として神戸製鉄所の人員推移は次のとおりです。

神戸製鉄所人員推移(協力会社を含む)
年度人員指数
196611,265100
19769,52785
19865,81952
19953,10028
20042,79425

 今、生産現場はギリギリの要員で操業されています。とにかく人を減らせということでベテランが次々と出向させられました。その上、事務所スタッフも大幅に減らされ、そのあおりで、かつてスタッフの仕事であった予算編成・実績管理・会議資料づくりなどの仕事がどんどん現場に下りてきています。職場の中心メンバーのデスクワークが増えて現場に出られない、若いものの教育まで手が回らないという状況です。
 労働災害の多発はこういう人減らしと生産増から必然的に生じたものです。安全意識の向上はもちろん必要でしょうが、事態はこれだけでは防げなくなってきています。

 「ばい煙排出」問題では、会社は環境保全よりも生産を優先した結果、排出基準を逸脱したことを認めました。その認識から、環境管理部門の要員を増員する、環境管理理部門に操業停止権限を付与する、環境保全に関する設備投資の強化、地域住民への積極的な情報開示等の対策がとられることになりました。形は整っても、長年の間、上層部・管理職層から押しつけられてきた「生産第一」の体質が本当に変わるのか、そこが問われています。

 労働災害多発も全く同じ構造の問題です。木村副社長のいう「安全優先」を本物にするために真っ先にやるべきことは、「生産第一」から決別して、要員を増やして安全に責任の持てる余裕のある職場にすることです。また、職場で働く労働者の声を良く聴いて、安全に対する積極的な投資で危険箇所をなくしていくこと、一人作業をなくしていくことなども緊急に取り組むべき課題です。

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