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神鋼の公害防止協定違反と違法行為を批判する

神鋼労働者OB

連日のように報道されている神鋼の環境データ改ざんなる違法行為を、加古川製鉄所で長く勤務した私は許すことができない。勤めていた会社が社会的な裏切り行為を30年近くも続けていたことに呆れ果て、私がそんな会社で働き続けていたのかと思うと、悔しさと怒りがこみ上げてくる。
この小文をしたため、初めは神鋼に送りつけようと考えたが、共産党神鋼委員会のホームページに寄せることにした。その理由は、後で述べることにする。

そもそも、風光明媚な別府の海岸を埋め立て加古川市の海岸線をすべて占拠して製鉄所が進出するとき、地元住民は環境汚染に大きな不安を抱き、実際にも様々な被害を受けた。公害防止協定を順守して環境を汚染からまもることを最大の条件にして加古川における製鉄所稼動に住民は同意したのであった。公害防止協定を守りきることは製鉄所が加古川で操業を認められる最も基本的な条件であった。
しかし、製鉄所を立ち上げてから、神鋼は協定を踏みにじって協定値を上回る汚染物質を排出しても、住民に隠し続けてきた。
6月14日の朝日新聞の記事には、「神鋼加古川改ざん」降下ばいじん増加、住民「まるで炭鉱」の見出しで被害の酷さが報道されている。協定値をこえても住民に詫びるどころか、それを隠して何も問題が無いかのように装い続けたのは、住民に対する深刻な裏切り行為であり、社会的な犯罪行為ではないか。

神鋼は、住民を裏切っただけではない。従業員をも裏切った。
煙突のばい煙測定や工場排水の水質検査は地味な仕事である。来る日も来る日も使命感をもって作業を続けておられた人々の姿を思い出す。汗と汚れにまみれた作業で得た貴重なデータは、会社にとって公害防止協定の順守状況を自ら省みるとともに、操業の問題点と改善の方向を探求するためのものであったはずである。測定作業や検査作業にたずさわる人々はそう期待していたに違いない。けれども神鋼はそうしなかった。その測定値を改ざんして市や県に報告していた。これを、従業員に対する裏切りと呼ばずして何と呼べばよいのか。

6月21日同紙の記事では、神鋼神戸・加古川製鉄所で大気汚染防止法の基準をこえるばい煙を排出し、データを改ざんして自治体に報告しそれを10年近く前から複数の管理職が不正を知りながら放置していたことが分かったと報ぜられている。それどころか6月22日の報道では神鋼が提出した社内調査報告書を報じ、それによると改ざんは29年も前から続けられていたこと、ボイラーから排出される窒素酸化物や硫黄酸化物の濃度が基準値に達しそうになると記録計のペンを浮かせて記録が残らないようにし、この「ペン浮かし」が間に合わないときには基準値超過の記録紙部分を切り取って棄てて手書きのデータを張り合わしていたのである。改ざんは加古川製鉄所では77年から行われ、神戸製鉄所では78年から基準値を超えたデータは神戸市に送信できないようにしていた。
違法な状態を放置してそれを隠しつづけ、これが明るみにでたのは昨年連続して発生した死亡事故を含む重大災害に対する国の調査がきっかけと言われているから、神鋼の自浄能力の無さには、全く呆れる。

企業組織の腐敗はなぜ続いたのか
29年も違法な状態を放置し続けた企業組織に成り果てたのはなぜか。6月22日神鋼が兵庫県と神戸市・加古川市に提出した社内調査の報告書は「稼動を最優先させようとした組織の体質が原因だった」と結論づけたと報道された。(6月22日 朝日)
重要な測定値を改ざんするという犯罪的な作業をオペレータが常に行い、自治体への偽りのデータを送信するシステムが、神戸製鉄所・加古川製鉄所の両方で稼動していたのは、全社上げての違法行為であったことを示している。29年とは長い年月である。5年も経過すれば製鉄所の幹部と管理組織の人事は殆ど一新するのであるから、製鉄所の幹部や管理職は5代6代にわたってこの違法な状態を継承し続けてきた。その間、「ちょっとやり過ぎと違うか」の一声ぐらい発する幹部はいなかったのか。
作業現場から「こんなことやっていていいのか」の声はでなかったのか。あったとしても即座に握りつぶされてしまうような職場であることは、想像に難くない。違法行為をしてでも設備稼動を最優先に志向する幹部管理職の支配のもとでは、違法を違法だと批判するだけで、排除されたであろう。
労働組合は何もしなかったのか。現場の労働者が不正な作業を強制されているのを正そうとはしなかったのか。組合員が違法行為に加担する状態にあれば、会社に対して真っ向から反対し、組合員が正常な労働を続ける権利を守り、それを通じて社会的正義を行うのも、労働組合の役割ではないのか。
6月28日の朝日新聞は「神戸製鋼 また基準越すばい煙 加古川製鉄所 設定ミス、濃度2倍に」の見出しで、「自家発電用ボイラーで24日午後6時から1時間の平均値で大気汚染防止法の基準値を約2倍上回る濃度の硫黄酸化物を排出した。同社は、濃度を表示するコンピュータのプログラムを修正する際に、誤って濃度が通常の0.4倍で表示されるように設定したため、基準値を超えても警報がならなかったという」と報道している。濃度を自由自在に変えて表示できるシステムが存在していることからして不可思議である。
偽りのデータを自治体に伝送する環境管理システムを構想し企画し設計し製作発注し据付した人たちは、いったい自分が働くことの意義をどのように考えていたのか。高度な知識と技術を持った人たちが関わっていなければ、こんなシステムは存在しない。違法につながるシステム作りをなぜ拒まなかったのか。科学技術は人々の幸せにこそ役立てるものであるが、悪しき意図に従わせれば人々に危害を与えるものであることを、技術者は肝に銘じておくべきではないか。

組織の体質がここまで腐敗し、組織を構成する様々な人が「かいざん」に加担した。 どんな組織でも指導的立場にある者と、それに従って組織の目的達成のために活動する者から構成されている。したがって組織の腐敗に対しては指導的立場にある者の責任は決定的なものである。製鉄所の幹部・管理職は設備の「稼動を最優先させて」環境測定データを改ざんし外部へは何事も問題は無いかのように隠すことをすすめてきた。そればかりではない。製鉄所の環境対策を軽視して適切な処置を行わなかった。歴代の製鉄所幹部は安全管理と環境管理を軽視しつづけていた。
製鉄所で進められたコストダウン活動の中心は、なんと言っても要員の縮小である。要員を減らすには様々な手段が動員されつづけている。3人作業は2人作業に、2人作業はひとり作業に追い込むものから、連操部門の一斉休憩制限、下請け化と出向を組み合わせた長時間労働強制などが行われている。そのなかで、管理部門を含む様々な部門の廃止統合も容赦なく進められた。
製鉄所運営の要でもある環境管理と防災管理が独自の部門であったのを一つにして環境防災の部門としたのは、要員を減らすだけではなく、環境管理、安全管理双方を軽視するものとなった。安全管理を軽視していたことは昨年発生した14件もの連続事故災害であらわになってしまった。そして、今度は、環境管理、公害防止対策を怠っていることがあらわになった。
加古川製鉄所において、設備保全作業を続けてきたある人は次のように言っている。
「昔は事後保全と予防保全とにわけて、設備を停めないためには、予防保全が大切とよく云われた。故障してからでは遅い,故障する前に手を打てと。しかし、今では予防保全の考え方をなくしたみたいだ。老朽化しても設備更新の予算は不充分で,予備品も揃えない。上司も操業部門の人も故障したら設備を停めたらええと云っている。」
空前の生産量を達成する陰で、操業部門は設備稼働に追われ、設備管理部門は予防保全に徹しきれず後手に回る仕事に追われ、環境保全・公害防止の対策と安全対策を軽視する風潮が広がっていったと想像する。
生産活動のもとで生じる危険から働く人々を守って安全な労働環境を維持向上させるためのチェック機能が安全管理部門の役割であり、同じように生産活動がもたらす環境汚染を未然に防止するためのチェック機能が環境管理部門の役割であり、ともに製鉄所が存在を許される最低限の社会的義務を果たしていく上で要となる管理部門の筈である。その環境管理部門が自治体にむけて改ざんしたデータを送りつづけ、問題は生じていないと装おう役割を演ずるのであるから、そしてそれが通用しているのなら、操業部門で製鉄所全体で環境保全の対策の大切さなど忘れ去られて当然であったのではないか。

発覚した神鋼の企業組織腐敗から、住民として市民として私達はなにを教訓として得ることができるのか。
30年近くも反社会的行為を続けた事実を前にして、大企業には不正を自ら正していく自浄能力が存在しないことを痛感する。神鋼だけでない、雪印乳業の古乳混合、三菱自動車のトラック欠陥隠し、クボタの石綿問題、松下の不良温風器、例を挙げだしたらきりが無いくらいである。大企業は、不正が発覚するまでは、不正に気付いていても自浄に踏み切るどころか隠蔽しつづけるものであると判った。 したがって、製鉄所が生産を続け、社会的責任を果たしていくには外部から監視され続けなければならない。徹底した情報公開を行い、住民の監視のもとに規制を受けつつ生産を続けるしかないのである。市や県は住民の立場に立って監視を怠ることなく、また直接被害をこうむる立場にある住民が立ち入り調査を行い、要望する権利を保障すべきである。 神鋼に働く労働者は、住民・市民である立場からも、自分らしく働く条件を要求する労働者の立場からも神鋼の企業運営に正々堂々と指摘と要求していくべきだし、労働組合はそれを組織あげて支えるべきである。
7月4日朝日の報道によれば、神戸商工会議所会頭でもある水越神鋼会長は、データ改ざんについて「会頭として誠に遺憾であり、(神鋼の)会長としても大変な問題だと受け止めている。改善策を着実に実行することが問われており、きっちりとフオローしたい」と話したという。反省するのは当然だが、その反省を全面的に信頼して改善を委ねるわけにはいかない。やがて幹部も人が代わって再び「コスト優先」の弊害が製鉄所に生まれる可能性を誰が否定できよう。
私は、共産党が政策として大企業の民主的規制を掲げているのを知り、今、神鋼が企業として存続するには、民主的規制を受けるほかはないと感じたからである。これがこの小文を共産党神鋼委員会に寄せる理由である。
共産党の綱領には次のように書かれている。
「大企業にたいする民主的規制を主な手段として、その横暴な経済支配をおさえる。民主的規制を通じて、労働者や消費者、中小企業と地域経済、環境に対する社会的責任を大企業に果たさせ、国民の生活と権利を守るルールづくりを促進するとともに、つりあいのとれた経済の発展をはかる。経済活動や軍事基地などによる環境破壊と公害に反対し、自然保護と環境保全のための規制措置を強化する。」
一政党の綱領のなかの文章であるが、企業の環境破壊をくいとめる方向をこれほど簡潔に示した文章を他に知らない。
これから神鋼が行う是正改善活動の当事者も、監視、規制に加わる県、市の関係者、住民の方々もこの文章の意味を深く捉え、公害防止、環境保全は人類存続を脅かす地球温暖化(正確には高温化か)にも関連していることを踏まえて欲しいと考える。

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