職場の動き |
「熟練社員再雇用制度の見直し提案」を斬る |
昨年11月、会社は労働組合に対し「熟練社員再雇用制度の見直し」を提案しました。この提案は、'06年4月に施行される「高齢者雇用安定法の改正」により、会社は60才停年を迎える全労働者に雇用の場を提供することが義務付けられたことに対応したものですが、その内容はどうでしょうか? 「労働NEWS」に沿って、会社提案の具体的な中身を検証しながら、その実態を明らかにしたいと思います。 <会社提案の概要> |
1.提案趣旨 |
・ | 今後の少子高齢化の中で国際競争力の維持・強化のため、若年・中堅・ベテラン各世代間の最適な組み合わせを実現。ベテラン層の技術・技能の着実な継承・向上 |
・ | ベテラン層(60才超)の技術・技能の活用 |
2.雇用のあり方 |
・ | 「高齢者雇用安定法」を踏まえ、停年延長ではなく、60才超の労働者の再雇用 |
・ | 60才超労働者の再雇用のための新たな雇用創出は行わない |
3.対象者 |
・ | 60才時に社内職務に従事し、的確な職務を遂行できる能力と意欲があり、心身ともに健康な人 |
4.雇用期間 |
・ | 1年間。再雇用あり(但し、年金満額年齢まで) |
5.配置職務 |
・ | 停年退職時の社内職務、またはその関連社内職務 |
6.処遇条件 |
退職時社員段階 | 月額 | 一時金 (半期) | 年額 |
---|---|---|---|
技師1・2級、主幹・主査 | 17万円 | 55万円 | 314万円 |
技手1・2級、主務1級 | 16万円 | 55万円 | 302万円 |
技手3・4級、主務2級 | 15万円 | 55万円 | 290万円 |
7.短日勤務 |
業務の都合により短日勤務とする事がある | |
・ | 労働日数:月間13日 |
・ | 処遇:月額10万円、一時金:20万円/半期 |
・ | 健康保険:国民健康保険 |
<会社提案の問題点> |
提案内容をよくみると、本当の狙いは、いわゆる「2007年問題」(注2)の対応が目的であり、更には、劣悪な賃金で3〜5年間ベテラン労働者の技術・労働力を継続利用する事により、新たな利潤の創出を図る事が目的ではないか、と疑りたくなるような内容です。 主な問題点を次に記述します。 (注2)2007年に始まる団塊世代の停年に伴う技能・技術の喪失 |
1.「高齢者雇用安定法」の原則は「希望者全員を対象とする制度の導入」等です。これらの原則からはずれた対応となっている。 |
・ | 「会社が必要と認める職務に従事している」者と記述しており、再雇用対象者を限定している。また、対象者の条件に過去1年間20日以上の休職や欠勤がない者となっており、入院等の病欠者を排除している。 |
・ | 1年毎の再雇用の見直しとなっており、年金満額迄の雇用が保証されていない。 |
・ | 「再雇用するために新たな雇用創出は行わない」となっているが、技術・技能の継承と言いつつ、現状の業務繁忙状態では時間的に継承が困難である可能性が高い。また、再雇用者を除く社員数は実質的には減少する可能性がある。 |
2.処遇が劣悪 |
・ | 勤務日数・時間が同じであるのに退職前と比較して年間賃金が約半分程度となる |
・ | 福祉休暇がなく1ヶ月以上欠勤すると解雇となっており、病気療養に対する配慮がない |
・ | 現状の勤務体制(3交代)で60才を超えて現状職務を継続する事が体力的に可能かどうか |
・ | 会社都合による短日勤務の可能性が述べられており、更なる劣悪な労働条件となっている |
3.出向者が対象外となっている |
・ | 50才以上の社員の多くが余儀なく出向させられており、再雇用の対象者に含まれていない。もともと出向は会社の意向で実施されており、この面でも、「高齢者雇用安定法」の趣旨から逸脱している。 |
<「高齢者雇用安定法」に沿って本来実施すべき項目> |
私たちは会社に対し以下のことを要求します。 |
@ |
継続勤務を希望する全ての社員の停年を段階的に65才まで延長する 同時に一定期間での若年世代への技術継承を図るため、若年世代の新たな雇用を図る |
A | 賃金は60才時を基本とし、勤務の実態に見合う賃金を支払う |
B | 出向社員についても出向先との調整により停年延長を図る |
C |
労働者からの要望に沿った勤務形態を準備する
(全日勤務、交代勤務が困難な場合の対応) |
神鋼および関係会社で働く労働者の皆さん、会社と労働組合は労働者の真の声を十分反映する事なく、2月6日「熟練社員再雇用制度の見直し」を妥結・調印いたしました。 今後の改善を目指すためにも是非皆さんのご意見をお寄せ下さい。 |
参考資料 |
急速な高齢化の進行等に対応し、高年齢者の安定した雇用の確保等を図るため、事業主はいずれかの措置を講じなければならない |
@ | 定年の引上げ |
A | 継続雇用制度の導入(選別しない) |
B | 定年の定めの廃止 |
以下のホームページに高齢者雇用安定法の改正内容の説明が載っています。
法令等データベースシステム(第6編 職業安定 第2章 高齢・障害者雇用対策)http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/html/hourei/contents.html
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